2026.09.04
「キャリアを考えて」と言うだけでは、人は動かない
社員の「働く意味」を考える機会を、会社がつくるということ
「若手社員のキャリア意識を高めたい」
多くの経営者や人事担当者が抱く思いです。将来について考え、主体的に仕事に取り組み、長く活躍してほしい。そのために「5年後、10年後のキャリアを考えてみましょう」と研修を実施する。これは非常に大切な取り組みです。
しかし、「キャリアを考えてください」と伝えるだけで、人は本当に主体的に動き始めるでしょうか。社員がキャリアを描けない背景には、「将来の目標がないから」という理由以上の本質的な問いが潜んでいます。
「管理職になりたい人」を増やせばいいのか
企業がキャリア研修を検討する際、
「将来は管理職を目指してほしい」
「専門性を高めてほしい」
といった期待を込めがちです。
一方で、社員の頭の中には、
「そもそも自分は何のために働いているのだろう」
「今の仕事を続けた先に、どんな未来があるのだろう」
「会社から求められるキャリアと、自分の望みは一致しているのだろうか」
という、より根本的な問いが存在します。
この問いに向き合わないまま設定した将来の目標は、結局「会社から与えられた目標」に過ぎなくなります。だからこそ、自分が何を大切にして働きたいのか、仕事を通じてどうありたいのかを紐解くプロセスが不可欠です。
キャリアの問題は、「辞める・辞めない」の二択ではない
また、キャリアについて考える際、社員の判断を短絡的にさせない視点も欠かせません。仕事にやりがいを感じられないとき、「この会社は合わない」「転職すべきだ」と結論付ける前に、一度立ち止まる必要があります。
「本当に仕事そのものが合わないのか」
「目指す能力や役割が明確になっていないだけではないか」
「今の環境でも挑戦できる選択肢があるのではないか」
このように多角的に捉え直すことで、「辞める・辞めない」という極端な二択ではなく、現職で広げられる可能性が見えてきます。キャリアデザインの教育で培いたいのは、単なる目標設定力ではなく、目の前の感情や状況に流されず、自身の未来を多角的に捉え続ける力です。
「自分の成長」と「会社の成長」をつなぐ
また、キャリア形成において、個人の成長と組織の成長は決して相反するものではありません。
個人の能力が高まれば顧客へ提供できる価値が増え、仕事の理解が深まればチームへの貢献度も変わります。「自分がどうなりたいか」だけでなく、「仕事を通じて誰にどんな価値を届けたいか」まで視点を広げることで、個人のキャリアビジョンと会社の目指す方向性が重なり合います。
会社ができるのは、「正解」ではなく「問いと時間」の提供
社員のキャリアに対して、会社が正解を用意することはできません。会社にできるのは、社員が自らの未来に向き合うための「問い」と「時間」を提供することです。
また、キャリアは最初に描いた計画通りに進むとは限りません。経験を重ね、変化に直面する中で、未来像を柔軟に修正していくのが自然な姿です。
「何のために働くのか」を自分に問い続ける。
その機会を組織として用意することが、社員の主体性を引き出し、会社との新たな信頼関係を築く第一歩となります。