2026.09.11

「教えないOJT」が、良いOJTとは限らない

コーチングを取り入れた指導の考え方

「最近の若手には、答えを教えるのではなく、自分で考えさせたほうがいい。」

コーチング的視点をOJTなどの人材育成取り入れようとして、そのように考えている方も多いかと思います。

確かに、自分で考えて答えを出す経験は、成長のために重要です。そのため、「すぐに答えを教えない」「まず本人に考えさせる」という指導を意識する人も増えています。

しかし、ここで一つ注意したいことがあります。

コーチングとは、「教えないこと」ではありません。

特にOJTにおいて大切なのは、教えるべきときには教え、考えるべきときには考えてもらうこと。その使い分けにこそ、コーチング的OJTのポイントがあります。

「自分で考えて」と言われても、考えられない

例えば、仕事でミスをした後輩に、「どうすればよかったと思う?」と問いかけたとします。

後輩は一生懸命考えます。

しかし、そもそも仕事の知識が不足していて、何が問題だったのか分からない。経験が少なく、どんな選択肢があるのかも知らない。そんな状態では、いくら質問をしても適切な答えにはたどり着けません。

これは本人の考える力が不足しているからとは限りません。考えるための材料が、まだ十分にないからです。

このような場面では、必要な知識や考え方を教える「ティーチング」が有効です。

一方で、ある程度の知識や経験があり、自分なりの考えを持てる状態なら、すぐに答えを与えるのではなく、問いかけを通じて本人に考えてもらう。これがコーチングを部下・後輩指導に取り入れる際の考え方です。

コーチングは「質問すること」でもない

コーチングというと、「どう思う?」「どうしたい?」と、とにかく質問することだと思われることがあります。

しかし、質問を増やせばコーチングになるわけではありません。

特に、ミスをした相手に「なぜそんなことをしたの?」と繰り返し聞けば、本人にとっては「問い詰められている」と感じることもあります。

コーチングの基本にあるのは、質問の技術だけではありません。

「この人には、自分で考え、成長していく可能性がある」と信じること。

その姿勢があって初めて、問いかけが本人の気づきにつながります。

「何が起きた?」から始める

では、実際のOJTでコーチング的視点を踏まえた場合、どのように関わればよいのでしょうか。

例えば、後輩が仕事でミスをしたとします。

いきなり「次から気をつけて」と伝えるのではなく、「まず、何が起きたのか教えてもらえる?」と事実を確認する。

そのうえで、「そのとき、どう考えていた?」と本人の見方を確認する。

そして、「本来は、どういう状態になっているのが理想だったと思う?」と、あるべき状態を一緒に考える。

ここまで整理できたところで、「じゃあ、次はどうすればよさそう?」と問いかける。

本人から出てきた方法について、必要であれば指導者から知識や経験を補足し、より良い方法を一緒に考えていきます。

こうした関わりによって、単なる「反省会」ではなく、次につながる学びになります。

大切なのは、「答えを言わないこと」ではない

コーチング的なOJTで目指したいのは、指導する側が答えを言わないことではありません。

本人が考えることで成長できる場面では、あえて答えを渡さない。

一方で、知らないことを考えさせ続けるのではなく、必要な知識や技術はきちんと教える。

そして、本人なりの考えが出てきたら、それを認めたうえで、より良い方向へフィードバックする。

つまり、「教える」か「考えさせる」かではなく、「今、この人に何が必要なのか」を見極めること。 それが、コーチング的OJTにとって、一番大切な姿勢です。