2026.10.03

プロジェクトが遅れたとき、「もっと頑張れ」と言うのは上司の仕事なのか

―― 上司に求められるプロジェクトマネジメントという視点

プロジェクトが予定どおり進まない。

そんなとき、上司が現場に対して、

「進捗はどうなっている?」

「このままだと間に合わないよ」

「もっと急いで進めて」

と声をかける。

もちろん、進捗を確認することは必要です。

しかし、それだけでプロジェクトはうまく進むのでしょうか。

プロジェクトマネジメントというと、プロジェクトマネージャーなど、担当者の仕事だと考えられがちです。

一方で、上司にもプロジェクトを進めるための重要な役割があります。

それは、メンバーに頑張らせることではなく、プロジェクトが進みやすい状態をつくることです。

■ 「進捗管理」だけがプロジェクトマネジメントではない

プロジェクトを進めるには、計画を立て、実行し、状況を確認し、必要に応じて軌道を修正する。

そして最後に振り返り、次の仕事につなげる。

こうした一連のプロセスがあります。

弊社のプロマネ研修でも、開始・計画・実行・コントロール・終結という基本プロセスを、共通言語として体系的に理解することを重視しています。

ここで重要なのは、「計画どおり進んでいるか」を見るだけではないことです。

例えば、スケジュールに無理がないか。

作業同士の依存関係が整理されているか。

誰が何を担当するのかが明確になっているか。

特定のメンバーに仕事が偏っていないか。

こうしたことまで含めて、プロジェクトが進む条件を整える必要があります。

■ 部下の「頑張り」では解決できない問題がある

例えば、納期が遅れ始めたとします。

そこで、上司が「残業してでも取り戻そう」と指示したとします。

一時的には進むかもしれません。

しかし、原因が「一人のメンバーに仕事が集中している」「前の工程の遅れが次の工程に影響している」「そもそものスケジュールに余裕がない」といった問題なら、個人の努力だけでは解決できません。

必要なのは、

「どこに遅れが生じているのか」

「その遅れは、他の工程にどんな影響を与えるのか」

「誰の負荷をどう見直せばよいのか」

「計画そのものを修正する必要はないか」

といった視点です。

問題が起きたときに、人を追い込むのではなく、プロジェクトの構造を見る。

これも、上司に求められる役割の一つではないでしょうか。

■ 上司だからこそ見えるものがある

プロジェクトの現場では、目の前の仕事に集中するほど、全体を見ることが難しくなります。だからこそ、上司には少し離れた視点が必要です。

現場の負荷は適切か。

役割分担は機能しているか。

必要な情報は共有されているか。

他部署との調整に問題はないか。

場合によっては、メンバーの役割や負荷そのものを組み替える必要もあります。役割・負荷の再設定やコミュニケーション設計は、チーム運営の重要な打ち手です。

つまり、上司の役割は「現場に任せること」でも「細かく口を出すこと」でもありません。現場だけでは見えにくい問題を見つけ、必要な環境を整えること。それによって、メンバーが本来の力を発揮できるようにすることです。

■プロジェクトの成功だけで終わらせない

もう一つ、上司が担いたい役割があります。

それは、プロジェクトで得た経験を、次の仕事につなげることです。

「今回は大変だった」で終わってしまえば、同じ問題が次のプロジェクトでも繰り返されるかもしれません。

一方で、

「なぜ遅れたのか」

「どこで判断を変えるべきだったのか」

「次回は何を事前に確認しておくべきか」

と振り返り、学びを言語化できれば、その経験は組織の力になります。

最後に振り返りを行い、学びを言語化して次の案件に活かす視点が重要です。

特に上司に求められるのは、進捗を追いかけることだけではなく、人・役割・計画・コミュニケーションを整え、プロジェクトが進む状態をつくることです。

そして、そこで得られた経験を次の仕事につなげていく。

それもまた、上司の重要な仕事なのではないでしょうか。